月の珊瑚1

月の珊瑚1

歌名 月の珊瑚1
歌手 坂本真綾
专辑 『坂本真綾の満月朗読館』最終夜·月の珊瑚
原歌词
[00:00.00] 《月の珊瑚》
[00:02.42] 奈須きのこ
[00:04.17]
[00:05.45] (一)
[00:08.19] 眉唾な話だけど
[00:11.16] わたしのおばあちゃんは
[00:12.95] 月からやってきた人らしい。
[00:16.79] 今年もいよいよ終わりが近づいてきた。
[00:20.76] 十一回目の満月の夜
[00:23.23] あと一ヵ月後に今年は死んで
[00:26.06] なんの約束もない次の年を迎える。
[00:30.61] その時までわたしたちが生きている保証は
[00:33.96] あの透明な海月ほどもない。
[00:38.06] 今の人類にとって
[00:40.26] 月日とは失われるもの
[00:43.42] 死という単語はあらゆるものに適用される。
[00:48.07] 聞くところによると
[00:49.80] むかしの人たちは
[00:50.86] もっと明るい価値観を持っていたらしい。
[00:54.42] 暦は消費するものではなく循環するもの
[00:58.26] 巡るものとして扱われていたとかなんとか。
[01:02.65] 要は同じ情報の使いまわしだ
[01:05.99] 節約にもほどがある。
[01:08.40] かつての人類は贅沢だったというけれど
[01:11.52] 私たちから見たら大した倹約家だと思う。
[01:16.54] ただいま西暦、たぶん三千年ぐらい。
[01:21.89] 人類はとっくに終わっていて
[01:24.46] 毎日は繰り返される保証はなくて
[01:27.66] その代わり誰も争わなくなって。
[01:31.28] 人間が何千年もかけて積み上げた文明は
[01:34.65] ぜーんぶ空に捨ててしまって。
[01:37.44] わたしは十何回目かの求婚をふわりとスルーして
[01:42.02] 今日も今日とて
[01:43.69] 島の高台から海岸線を眺めている。
[01:49.12] 「空に水、水に空。
[01:52.81] 月の空には砕け散った海がある」
[01:58.25] 光る海を見ていると
[02:00.56] 知らずおばあちゃんから
[02:02.00] 教わった歌がこぼれてしまう。
[02:05.20] 正確には
[02:06.45] おばあちゃんのそのまたおばあ
[02:07.99] ちゃんから伝わったもので
[02:10.12] 言葉の意味は分かるものの
[02:12.35] その真意は読み取れない。
[02:15.89] 祖母を悪く言うようで気が引けるけど
[02:18.85] 少女趣味が過ぎるというか。
[02:21.94] 終わりの見えた毎日なのに
[02:24.44] 夢の中にいるような人だった。
[02:28.72] 母も祖母も
[02:30.49] そのまた母も同じような趣味で。
[02:33.25] 同じように
[02:34.70] たいへんな美人だったらしい。
[02:38.19] 残念ながら
[02:39.70] わたしはちょっと型落ちだ。
[02:42.52] 母ほどの美しさはないし
[02:45.30] なにより少女らしさに欠けている。
[02:48.27] それでも求婚者が後を絶たないのは
[02:51.38] ひとえにこの島のおかげだろう。
[02:56.00] 「おや。アリシマの君のお帰りですか」
[03:02.15] 風を感じて空を見上げると
[03:04.96] 真っ黒い飛行機が飛んでいくところだった。
[03:09.02] ごう、という逞しい駆動音。
[03:13.58] 月光を遮って浮かびあがる最後の文明
[03:17.56] あるいはその名残。
[03:20.72] 鋼の機体は鈍く強く輝きながら
[03:24.95] 東の空を目指していく。
[03:29.16] 撃墜マーク、これにて十六人目
[03:34.00] しかも今回は新記録だ。
[03:37.12] わたしはいつも以上の無理難題を押しつけて
[03:40.61] 一日のうちに求婚者を追い返した。
[03:45.00] 島でも前代未聞だと怒られたけれど
[03:48.42] 今日ばかりは仕方がない。
[03:50.94] 満月の日にやってくる相手が悪い。
[03:54.13] 場の空気を読め、というヤツである。
[03:58.14] 酸素は薄くなったけど
[04:00.38] 愛を語るのならそれぐらいは常備してほしい。
[04:05.67] わたしの住む島は
[04:07.54] 人口五十人足らずの小さなコロニーだ。
[04:12.02] 都市のある本土は海を隔てた遙か彼方。
[04:16.91] 島には港がなく
[04:19.18] 三日月形の海岸には
[04:21.40] 島特有の珊瑚礁が広がっている。
[04:25.78] 島の人々にとって
[04:27.71] 珊瑚礁はごく普通のものだけど。
[04:30.87] 都市部の人々にとっては
[04:32.85] 宝石より価値のあるものらしい。
[04:36.49] おばあちゃんの頃から
[04:38.42] この島は聖域として扱われている。
[04:42.41] 海から入ることは固く禁じられ
[04:45.57] 飛行機なんて貴重品を持っている人
[04:47.71] しか上陸できない。
[04:50.88] わたしがお姫さんと呼ばれるのも
[04:53.73] 本土の人たちにとって
[04:55.61] この島が特別なモノだからだ。
[04:59.55] 人類復興の希望の星、と彼らは言う。
[05:04.93] わたしたちにとっては極めて日常的な
[05:08.46] いつ終わっても
[05:09.93] 『そんなものか』的な環境にすぎないのだけど。
[05:14.66] 「でも残念。
[05:16.68] 空は飛べても
[05:18.39] 月のサカナはやっぱり無理なのね」
[05:22.67] わたしは毎回
[05:24.64] 求婚者に無理難題を押しつける。
[05:27.98] 今回のお題は月のサカナだった
[05:32.80] 月は一方通行の世界だ。
[05:36.12] 行く方法はまだ残っているらしいけど
[05:39.10] 帰ってくる方法がないらしい。
[05:42.58] 行くだけなら現実的だけど
[05:44.89] 戻ってくる事はできない。
[05:48.03] 生きていながら見る事のできる
[05:50.66] 現実的な死の世界。
[05:54.51] 月に行け
[05:55.66] というだけでも酷な話なのに。
[05:58.21] その上
[05:59.30] 居るはずのない
[06:00.11] サカナを取ってこいというのだから。
[06:02.61] アリシマの君が怒って帰るのも頷ける。
[06:06.90] けれど誓って
[06:09.14] わたしは本気なのである。
[06:12.31] 難題をこなしたのなら
[06:14.23] 誰であろうと一生を捧げる覚悟。
[06:17.57] だってそれぐらいでしか
[06:19.42] わたしは愛を測れないから。
[06:23.27] この星からは多くのモノが失われたけれど
[06:26.76] その最たるものは
[06:28.74] 人を愛する気持ちだという。
[06:32.99] 月が死の世界になってから幾星霜。
[06:37.03] いや
[06:38.17] 人間にとっては初めから死の世界だったから
[06:41.82] 元に戻った、と言うべきか。
[06:45.34] 月への移住計画は
[06:47.58] 増えすぎた人口対策の一環だったという。
[06:51.84] 月は新しい開拓地になって
[06:54.75] 移住した人々は月面に都市を
[06:57.69] 国家を作るに至った。
[07:00.88] けれどその後、あの大災害が訪れた。
[07:06.00] 地上もポールシフトで大変だったらしいけど
[07:09.46] 人類に訪れたものはもっと決定的で
[07:13.42] かつ形のないエンドロールだった。
[07:17.01] なんというか。
[07:19.67] 人類は唐突に、情熱を失ったのだ。
[07:26.18] それは開拓への熱であり
[07:28.82] 解明への熱であり
[07:31.05] 繁殖への熱だった。
[07:34.15] うちの息子が引きこもったのです
[07:36.63] なんてレベルではなく
[07:38.55] 人類規模で
[07:40.14] 『何もかもどうでもよくなった』のだ。
[07:43.33] こっち側の人たちは
[07:45.43] 文明のほとんどをあっち側に押しつけた。
[07:50.16] 地上では文明がなくても生きていける
[07:53.36] でも月では文明なくして生きてはいけない。
[07:58.01] なので地上の人たちは
[08:00.47] 『人類の叡智を保存するのはおまえたちの役割だ
[08:04.71] 我々は正直、もう面倒になった』
[08:08.71] なんて風に
[08:10.43] すべてを月に預けてしまった。
[08:13.86] その後
[08:15.37] わずか半世紀で
[08:16.96] 月と地上は没交渉になった。
[08:20.20] どちらの人類も
[08:22.00] もう交換するものはない
[08:23.94] と閉じこもった。
[08:26.52] こっちはこっちの資源だけで
[08:28.43] なんとか回るようになっていたし。
[08:30.98] 月も月で
[08:32.39] 必要なだけの環境は整えられた。
[08:37.05] 月の明かりが途絶えたのは
[08:39.61] それから何十年か後の事らしい。
[08:43.73] 一方、地上の人口も激減していった
[08:48.75] なにしろ増やす気がなくなったのである
[08:52.12] 放っておけば五十年ほどで種は途絶えてしまう。
[08:57.15] それでもなんとか生き延びているのは
[08:59.75] 十人に一人の割合で
[09:02.09] “まだ頑張れる”物好きがいたからだ。
[09:07.31] 自分だけで手一杯なのに
[09:09.48] 他人にまで気を配れるというマメな人たち。
[09:13.72] そんな物好きたちが集まって作り上げた
[09:16.96] 『かつての』人間の集まりが
[09:19.51] 都市部と呼ばれる生活圏。
[09:22.17] 行ったコトがないので詳しくはなんとも
[09:26.18] 名を人類復興委員会
[09:30.11] 生命の基本に立ち返ろう、という運動
[09:34.28] その原理を愛という。
[09:37.63] わたしにはそれが本気で分からない
[09:41.51] 気持ち悪いのではなく
[09:43.70] 互いを思い合うという状況が
[09:46.50] どんなものなのか想像できない。
[09:49.70] それはほんとうに気持ちの良いコトなのだろうか
[09:54.47] きっと不具合しか生じない。
[09:56.97] もっと系的なもので相互補助した方が
[10:00.24] よっぽど気持ちはいいと思う。
[10:03.08] そこには安心があり
[10:05.07] 打算があり、明確な作業がある。
[10:09.28] 見えもしない相手の心を理解しよう
[10:11.82] なんて行為は、それこそ現実的ではない。
[10:16.98] このように
[10:18.98] わたしが求婚される度に
[10:20.82] 無理難題を押しつけるのは。
[10:23.14] 自分では愛が測れないから
[10:26.23] 相手に測ってもらっているだけなのだ。
[10:30.51] わたし以上に価値のあるものを手に入れて
[10:33.24] なお引き替えにできるなら。
[10:35.62] その人は確かに
[10:37.38] わたしを必要としているのだと証明できる。
[10:42.11] 殿方も人間も好きだけど
[10:45.12] 愛だけは理解できない
[10:47.82] でもそれなりに幸福だ。
[10:50.69] 太陽と水と空気があれば
[10:53.27] なんとなく生きていけるのがわたしたちだし。
[10:57.51] あぁ
[10:58.70] こんなだから人間は終わってしまったのでしょう
[11:01.98] と自己嫌悪もなくはないけど。
[11:06.65] 「星はまたたく、海はさざめく
[11:10.92] 人恋しくて珊瑚は謳う。
[11:14.14] わたしたちは海月みたいに
[11:16.72] ふわりふわりとその日ぐらし」
[11:21.10] 暗い野原で歌いながら
[11:23.25] くるくるとステップを踏む。
[11:26.84] 「おや。人生を海月に喩えるとは、また力強い」
[11:34.40] そんなわたしの独白をさえぎる声
[11:38.13] 見えない膜に包まれたような
[11:40.65] 男の人の声だった。
[11:44.84] 「失礼……さん、というのは貴方ですか?」
[11:51.50] 名前を呼ばれて振り返ると
[11:54.19] 妙チクリンなものが浮いていた。
[11:57.51] ランチバッグ程度の大きさの
[11:59.98] ブリキの乗り物
[12:02.11] お刺身を載せる舟みたい。
[12:05.39] その上に
[12:07.02] これまたブリキで出来たような人形が乗っている
[12:11.55] 人形の表面はヤカンみたいにつるつるで
[12:15.33] どこもかしこものっぺらぼう。
[12:18.31] 顔の部分には透明な覗き穴があるのだけど
[12:22.63] 月の光が反射して
[12:24.81] 中の様子は分からなかった。
[12:28.01] ともあれ
[12:29.35] 名前を呼ばれた以上は
[12:31.40] 挨拶を返さなければ。
[12:34.27] 「こんばんは。はじめまして
[12:37.42] でいいのかしら?」
[12:39.29] 「これはご丁寧に、私こういう者です」
[12:44.68] ブリキの彼は小さな紙切れを持ち出した。
[12:49.74] 何に使うものかは分からないけど
[12:52.91] 丁寧に差し出してくれたので
[12:55.06] こちらも丁重に受け取った。
[12:58.82] 「島の外から来た人?」
[13:01.29] 「はい。貴方に会いに来たのです。
[13:05.21] ご迷惑でなければ
[13:06.82] お話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
[13:11.08] わたしは今度こそ目を丸くして
[13:13.89] 失礼なコトにまたたきなどしてしまった。
[13:17.90] 新しい求婚者?珍しい。
[13:22.74] いろんな人たちに会ってきたけど
[13:25.14] 手のひらに乗るぐらいの人は初めてだ。
[13:28.99] 「いえ、自分の職務は配達なのです
[13:33.30] この島に訪れたのは仕事が半分
[13:36.47] 個人的な趣味が半分です」
[13:39.58] 膜のかかったような声は
[13:41.89] あのブリキの服ごしだからだろうか。
[13:45.86] ふわふわ浮かぶ小さな舟と
[13:48.61] 見たこともない格好の来訪者。
[13:52.00] わたしは興味を抑えられず
[13:54.40] つい、会話より観察に没頭してしまった。
[13:59.62] ブリキの彼は気にした風もなく
[14:02.55] いまの時刻とか、今の年代とか
[14:06.60] 今の気候なんかを話しはじめた
[14:09.84] 世間話のつもりらしい。
[14:13.10] わたしはもちろん空返事
[14:15.65] 会話はこれっぽっちも成立しない。
[14:19.55] 言葉はほどなくして尽きた
[14:22.86] 小さな彼はやや困ったように頰を搔いている。
[14:26.91] わたしは自分の身勝手さを恥じて
[14:30.45] 会話のソースを提供する。
[14:33.44] 「さっき、趣味が半分って言っていたけど?」
[14:37.63] 「はい。私は商人もしているのです。
[14:41.36] 貴方を訪ねたのもその一環です。
[14:44.84] 貴方の持つ物資と
[14:46.78] 私の持つ物資を交換したいのですが
[14:49.80] いかがでしょうか?」
[14:52.02] 必要なものを仕入れにきたのです
[14:54.92] と彼は言った。
[14:57.50] わたしは本気で困ってしまう
[15:00.18] だって
[15:01.28] こんな珍しい人が欲しがるモノなんて
[15:04.19] この島には何処にもない。
[15:07.28] 「他をあたるべきよ
[15:09.31] わたし
[15:10.54] そんな貴重なものは持っていないわ」
[15:13.96] 「いえ、商人の基本は
[15:17.08] 足りないモノを買う
[15:18.63] というコトです。
[15:20.40] こちらで貴重とされるものは
[15:22.76] 私には有り余っています
[15:25.21] ですから、その逆もあるのです。
[15:29.36] 物語を知りませんか
[15:32.00] どこにもない
[15:33.46] 出版されていないものです」
[15:36.78] わたしはまたも
[15:38.61] 特に理由はなく
[15:40.48] ブリキの彼をまじまじと見つめてしまった。
[15:45.03] 大人のように落ち着いた彼が
[15:47.61] 子供みたいな要求をしたからだろうか。
[15:51.78] すとん、と言葉が胸に落ちる。
[15:55.55] 普段なら馬鹿にするところなのに
[15:58.07] わたしはごく自然に
[16:00.14] その仕入れに協力したくなっていた。
[16:04.62] 「それなら一つ
[16:06.31] お望みの歌があるわ
[16:08.78] おばあちゃんから教わった話だけど
[16:11.52] それでいいかしら」
[16:13.62] 「口伝とはまた高価なものを。
[16:17.30] ですが申し訳ありません
[16:19.43] 私は貴方たちの言葉を正しく聞き取れないのです
[16:23.56] お手数ですが、文字にしていただけませんか」
[16:27.74] ブリキの彼は
[16:29.42] わたしたちの言葉に疎いらしい。
[16:32.67] よく今まで話せたものだと呆れたけれど
[16:36.16] 振り返ってみれば
[16:37.73] そんな流暢には会話していなかったっけ。
[16:42.63] 「無理よ。わたし、読み書きができないもの」
[16:47.26] 「ええ、存じ上げております。
[16:51.18] 次の満月に帰りますので
[16:53.66] それまでに本にしていただければ。
[16:57.26] ですぎた真似ですが
[16:59.08] 私がご教授してさしあげましょう」
[17:02.98] 彼はとん、と胸を叩いた
[17:06.41] 任せろ、という表現らしい。
[17:09.62] ちっとも頼もしくない
[17:12.49] 勉強不足がこんな事で祟るなんて。
[17:16.07] 人類はとっくに終わったのに
[17:18.47] わたしの人生は波乱含みだ。
[17:22.30] それは、まあ、それとして。
[17:26.49] 「ところで。海月が力強いって、どうして?」 
[17:33.04] 「ずいぶんと昔の話ですが
[17:35.92] 海月の仲間の一つが
[17:37.51] 細胞死による老化問題を解消しています。
[17:41.83] 永続を実現させた数少ない動物です
[17:46.64] 海月というのは
[17:48.50] 存外にたくましい生命なのです」
[17:51.73] 彼はやっぱり
[17:53.68] 丁寧な口調で小難しいデータを返した。
[17:57.92]
[17:59.64] (二)
[18:02.53] むかしむかしのお話です。
[18:05.73] 影の海と名付けられた荒野に
[18:09.20] 少女の姿をした
[18:11.23] 一つの石がありました。
[18:14.81] 美しい亜麻色の髪
[18:17.38] あどけない瞳と薄桃の唇。
[18:22.76] しなやかに伸びたヒトっぽい手足
[18:26.82] しみ一つなく、デコボコもなく
[18:30.86] 磨かれた石灰のような肌。
[18:34.15] それは人の美意識の統計によってかたどられた
[18:38.65] 万人に愛される少女像でした。
[18:43.18] もとからそういうカタチだったのか
[18:46.34] 後からそういうカタチになったのか。
[18:50.53] ピグマリオンの伝説も
[18:52.54] ここでは遠い異国の話。
[18:55.90] はっきりしているのは
[18:58.07] 彼女は生まれながらのお姫さまで
[19:01.18] 多くの人たちに望まれて
[19:03.54] 目を覚ましたというコトだけ。
[19:07.04] 世界は一面の荒野でしたが
[19:10.25] 彼女のまわりにだけはくるぶしほどの深さの湖と
[19:15.28] 見上げるばかりの花弁が咲いています。
[19:19.02] もちろん
[19:20.23] 石灰を彫り込んだだけのニセモノですが。
[19:25.46] 空に氷、氷に空。
[19:30.81] この冷たい星を
[19:32.49] 温かな氷で包んでほしいと
[19:35.11] 彼女はお願いされました。
[19:38.16] 誰にお願いされていたのかは
[19:40.94] もう定かではありません。
[19:44.33] 彼女が生まれた時には大勢の人がいたけれど
[19:47.97] 少しうたたねしている間に
[19:50.75] みんなキレイに消えさってしまったからです。
[19:55.54] ひとりぼっちになったところで
[19:58.01] 彼女は多くの仮説を楽しみました。
[20:01.74] まずはシステムの不備でみんな死んでしまった説
[20:06.55] でも
[20:07.56] 彼女が生きているかぎりそれはありません。
[20:11.62] 必要なモノは今も供給しているし
[20:14.76] 不慮の事故での全滅はないでしょう。
[20:18.80] 次に、みんな眠っている説
[20:23.29] 起きているのも面倒になったので
[20:26.06] いっせえのせでまぶたを閉じた
[20:27.94] 可能性も大ありです。
[20:31.08] 仕方なく星の表側に感覚を伸ばしてみましたが
[20:35.28] 人々の反応はありません。
[20:38.49] 彼らは本当に
[20:40.46] この国から消え去ってしまったのです。
[20:44.92] あれこれ仮説を潰していく中
[20:47.98] ふと、彼女はこの国の法律を閲覧しました。
[20:52.91] 司法曰く、こちらの住人は
[20:57.17] あちらの住人との恋を禁じる。
[21:01.39] このルールを破ったものは
[21:03.10] 地上への落下刑に処す。
[21:06.44] もしかすると
[21:08.13] 人々はその罰でみーんな
[21:10.69] あちら側に落ちていったのかもしれません。
[21:14.91] うんうん、と彼女は頷きました。
[21:19.29] いえ、首は一ミリも動かないので
[21:23.27] 気持ち的に頷きました。
[21:26.43] 信憑性はこれがいちばんだったのです。
[21:31.54] それでも彼女は真面目だったので
[21:34.97] 望まれた仕事を続けます。
[21:38.34] まず都市部への余分な元素提供をカット
[21:43.09] 娯楽施設はもう必要ありません
[21:46.48] その分を環境調整に費やします。
[21:50.99] 影の海は半世紀ほどで
[21:53.93] 樹木と空を完備した都市になりました。
[21:58.34] 樹木は石灰で
[22:00.34] 空は氷を張っただけのニセモノですが
[22:03.87] とにかくオーダーには応えたのです。
[22:07.60] 人々が望んだコトは
[22:09.98] 人々さえいなければ
[22:12.33] こんなに簡単にできることでした。
[22:16.71] 月に七つの海を作ってからさらに半世紀。
[22:22.26] 望みを叶えれば戻ってくると思われた人々は
[22:26.08] けれど影も形もありません。
[22:30.22] 音のない世界にひとりきり
[22:33.56] ときどき、人々は追放されたのではなく
[22:37.76] 自分だけこの星に追放して旅だったのでは
[22:41.60] と真実に気付きそうになる事もありましたが
[22:46.19] あくまで仮定なので
[22:48.10] ひび割れるコトもありません。
[22:51.78] 彼女は氷に映る
[22:54.08] ここからでは決して見ることのできない
[22:56.90] 青い星を見あげます。
[23:00.63] 人々はあの星に旅だったのでしょうか。
[23:05.29] せっかく美しい森を作ったのに
[23:09.06] 誰も見てくれないのでは
[23:11.63] それこそ骨折り損というものです。
[23:16.15] なにしろ彼女は
[23:18.26] この森になんの思い入れもないのですから。
[23:23.08] ある日のことです
[23:25.99] 砂を踏む気配で目が覚めました。
[23:29.31] そういえばちょっと前に
[23:31.44] こつん
[23:32.17] と体に何か当たった気がする彼女でした。
[23:37.36] 意識を起こすと
[23:39.32] 驚いたことに
[23:41.08] 並木道を何かが歩いてきます。
[23:45.40] ずんぐりとした体格
[23:47.90] 可動範囲の少ない歩行。
[23:51.09] 自分と同じかそれ以上の
[23:53.39] すべすべで単色の肌。
[23:56.68] それはブリキで出来たヤカンみたいな
[24:00.46] およそこの世の美意識とはかけはなれた
[24:03.70] 冗談みたいな生き物だったのです。
[24:08.02] 彼女は驚きに目を見はりながらも
[24:10.95] 未知の体験に胸を躍らせました。
[24:14.15] だってはじめて、そして遂に
[24:17.49] この星に宇宙人がやってきたのです!
[24:21.94] 「待て。
[24:23.17] 話が違う
[24:25.01] なんだって月面に宇宙人がいる?」
[24:28.75] まあ、それも彼女の勘違いだった訳ですが。
[24:35.54] やってきたのは地上から昇ってきた人間でした
[24:41.06] 宇宙人と言えば確かに宇宙人なのですが。
[24:45.34] 今までの人々と同じく
[24:47.67] 会話をするコトはできません
[24:50.81] 彼女には喉がないのです。
[24:55.19] それでも彼女は今まで通り
[24:57.89] 彼の独り言を解析します。
[25:01.52] 分かったのは些細なコト
[25:04.37] 彼は周囲の反対を押し切って
[25:07.35] 自分からこの星にやってきたらしいのです
[25:11.79] 辿り着くコトに意味のない。
[25:14.67] 発つ理由も
[25:16.20] 見返りもない一方通行の旅を、ひとりで。
[25:23.00] 「そうか。生存の為の物資はあっても
[25:27.42] 精神面での不足は解決できなかったのか。
[25:31.70] 自滅とは、さすがは地上より進んだ文明だ」
[25:37.74] 彼は都市の機材を使って
[25:40.12] かってに生活をはじめました
[25:42.98] ゆうゆうじてき、というヤツです。
[25:47.53] 彼は十二時間周期で彼女のところにやってきては
[25:51.57] タンクに水素が溜まるまでの間
[25:54.23] 独り言を続けます。
[25:57.19] 「人のカタチをしているからといって
[26:00.10] 人間の文化を押しつけるのは
[26:01.88] 傲慢ではないだろうか」
[26:04.88] 彼はそう言って
[26:06.26] 彼女のドレスを脱がせようと試みましたが
[26:09.60] それは全力で阻止しました。
[26:13.05] 信じられないでしょうけど
[26:15.40] 彼女の体が彼女の思った通りに動いたのは
[26:19.64] これがきっかけなのでした。
[26:23.52] 「昨日は申し訳ないことをされた
[26:26.52] あやうく火星まで飛ばされるところだった。
[26:30.02] ここが地上なら
[26:31.80] 今ごろ君は檻の中だ。
[26:34.46] 君には少し
[26:36.29] 人間の機微を教授しなくてはならないようだ」
[26:40.49] 彼は当然のように彼女の助けを受けながら
[26:44.44] こんな辛辣なコトを言うのです。
[26:48.49] それでも彼の語りは新鮮で
[26:51.40] ふしぎな親近感があるのです。
[26:55.09] この状況なら
[26:56.77] 誰であれいい人に見えてしまうと思うけど。
[27:00.26] それはあえて追及しません
[27:04.01] 彼女にとって彼は新しい世界でした。
[27:09.35] “こんな素晴らしい方が
[27:11.69] どうして死の世界にやってきたのだろう?”
[27:15.18] 信じがたいコトですが
[27:17.63] 彼女は彼のために
[27:19.53] そこまで心を痛めたりもしたのです。
[27:23.82] 多くの仮説から最有力候補にあがったのは
[27:27.90] 彼も人々と同じだろう、というものでした。
[27:34.28] こちらの世界の住人があちらの住人に恋をすると
[27:39.04] 罰として落とされる。
[27:41.32] それと同じように
[27:43.32] 彼もこちらの住人に恋をしたから
[27:46.45] ここまで昇ってきたのではないでしょうか。
[27:50.76] ですが皮肉なコトに
[27:53.19] こちらの住人はみな消えてしまいました。
[27:57.82] 彼は恋のためにやってきて
[28:00.48] 元の世界に帰る術をなくしたのです。
[28:05.36] 彼女は悲しくなって
[28:07.72] せめてよい暮らしを
[28:09.10] と今まで以上に励みました。
[28:13.44] けれど
[28:15.69] 「無駄な消費はよくない
[28:18.13] 無制限に使っているが
[28:20.09] 底をついたらどうしてくれる。
[28:22.74] 君が枯渇したら
[28:24.72] こちらも共倒れなんだぞ」
[28:27.73] 彼女の行為はいつだって空回り。
[28:32.30] この頃には人間の言葉も覚えて
[28:35.28] 発声器官もまねて発話をしますが
[28:38.35] 彼は聞く耳を持ちません。
[28:41.41] むしろ
[28:42.55] 人間らしく話しかければ話しかけるほど
[28:45.92] 嫌悪感をあらわにしていくのです。
[28:50.08] 彼女は彼のために色々なものを用意しました
[28:55.29] かつてないほど頑張りました。
[28:58.80] 生命の原理
[29:00.66] 原子の法則をねじまげるぐらい努力しました。
[29:05.69] もう説明する必要はないでしょう
[29:10.26] 彼女は彼に、それほどの恋をしたのです。
[29:16.05] “とても素敵なヒトでした
[29:19.09] わたしのような石に
[29:21.60] 生命の定義をしてくれたのです。”
[29:25.77] いまも
[29:26.83] その言葉は多くのサンゴに焼き付いています。
[29:31.20] なのに彼は礼も言わず
[29:33.40] ただ消費するばかり。
[29:37.17] “わたしはヒトに近づけたでしょうか?”
[29:41.41] そう語りかけるように氷の下で踊ります。
[29:46.24] 彼女の両足が地表から解き放された
[29:50.31] はじめての日のコトです。
[29:54.63] 「どちらかというと
[29:56.53] 君の体は珊瑚のようだ」
[29:59.79] 思えば
[30:01.41] それが一度きりの褒め言葉でした。
[30:06.11] いや、でもおばあちゃん
[30:09.07] これは褒め言葉じゃありません
[30:11.62] 嫌みだと思います。
[30:14.93] でも彼女は
[30:16.61] その言葉がとても
[30:18.55] とても嬉しかったようなのです。
[30:22.03] それから十二時間はずっと
[30:24.49] 珪素で出来た自分の体が誇らしかったほどに。
[30:30.98] 月日にすると半年ほど
[30:33.73] ふたりの時間は続きました。
[30:37.04] 終わりはあっさりしたものです。
[30:40.40] 彼は船を修理しきると
[30:43.04] 彼女を抱きかかえて船に乗り込みました。
[30:48.05] 彼女はここのところ弱っていて
[30:50.90] 動くこともできなかったので
[30:53.42] 乗船も
[30:54.72] その後の処理も
[30:56.16] 簡単に済まされてしまったのです。
[31:00.63] 影の海を離れるのは不安でも
[31:03.82] 彼がいるのなら喜ばしい。
[31:07.98] 彼女はせまい
[31:09.51] ひとりぐらいしか乗るスペースのない船の中で
[31:12.90] 幸せそうに目をつむります。
[31:17.09] 「人間がイヤで
[31:19.23] 何もかもを見限って
[31:21.21] 月に昇ってきた」
[31:25.08] 声は船の外側から。
[31:28.61] 今まで誰もいなかった
[31:31.11] これから誰もいなくなるはずの
[31:33.66] 荒野から響いてきます。
[31:37.99] 「そんな私が、人を愛する道理がない」
[31:43.52] 体は動きません。
[31:45.83] 気付いても、扉は開きません。
[31:50.19] 彼女はもう星から離れてしまったから
[31:53.15] 星も動いてはくれません。
[31:56.47] 星を覆っていた氷の空は
[31:59.34] 夢のように砕けていきます。
[32:03.16] 「君が私に向けている好意は
[32:06.00] 愛情ではないと思う。
[32:08.32] 単に、君が人を知らないからだ」
[32:13.40] 彼女は覗き窓にすがりついて
[32:16.20] 忘れていた掟を思い出しました。
[32:19.53] あちらの人間に恋をすると
[32:22.59] 罰として、永遠に別れるのです。
[32:27.62] 「動物的な感情を満たしたいだけなら
[32:30.90] あの地上には相応しい相手が山ほどいる。
[32:34.99] 君はそこで生きればいい」
[32:38.69] ああ、彼はここに残るのだと
[32:42.42] 彼女は嘆きました。
[32:44.94] 同時に
[32:46.25] それが彼にとっていちばんいい選択なのだと
[32:49.81] 理解してもいたのです。
[32:53.47] 「しかし。君はどうあっても
[32:57.03] あの星にとって善いモノではないだろう。
[33:00.64] 私は地上の人間を
[33:03.18] 二度殺すことになるな」
[33:06.65] 以前の彼女からすればちっぽけな火花。
[33:11.17] 今の彼女にすれば
[33:12.81] 恐ろしいほどの光と熱を吐き出して
[33:16.06] 船は地表を離れていきます。
[33:19.96] 銀色の大地。
[33:22.94] 彼女そのものだった世界が
[33:25.64] 他人のように遠く遠く。
[33:29.86] ヒトになりかけていた彼女の目には
[33:32.70] 遠ざかる小さな星。
[33:36.38] 暗い海に独りきりで
[33:38.80] きらきらと輝くのです。
[33:42.84] けれど
[33:44.37] 青い宙を航る最中でも
[33:47.30] 彼女に涙する時間はありませんでした。
[33:51.50] 彼は本当にひどい人間で
[33:54.39] 彼女の安全なんて配慮していなかったのです。
[33:58.76] 船には地上の重力圏に
[34:00.62] 入るだけの燃料しかなく。
[34:03.30] 六倍の重力下での不時着に
[34:05.41] 耐えきれる設計ではありません。
[34:09.07] 船は空で分解し
[34:11.77] 彼女はそれはもう悪い冗談のように
[34:14.74] 真っ逆さまに青い海に落ちました。
[34:18.67] それがこの島の始まり。
[34:22.94] 彼女は一命を取り留めましたが
[34:25.53] 落下のショックで
[34:27.00] 記憶がところどころ欠けてしまいました。
[34:31.61] 島に新しい珊瑚ができたのはこの時から。
[34:36.42] 彼女はここで暮らし
[34:38.64] 子を育み、生涯を終えました。
[34:43.95] ただ、毎月。
[34:47.40] 満月の夜になると空を見上げては
[34:51.77] 幸せそうに笑っていたというコトです。
[34:57.49] かくして、わたしのはじめての創作は
[35:01.06] 無事終わりを迎えた。
[35:05.35] 「ところどころ貴方の主観がまじっていますね
[35:08.71] 一部、特定の人物の描写に偏見もみられます」
[35:14.30] このように
[35:15.80] ブリキ編集には
[35:17.09] 三回ほどダメ出しをもらっていたが。
[35:20.78] 明日は満月。
[35:23.01] わたしはまる一ヵ月
[35:25.23] 小さな配達人に
[35:26.96] 物書きを教えてもらっていた事になる。
[35:30.90] 彼はこちらの言葉をうまく聞き取れないため
[35:34.55] 会話はたまにすれ違いはしたものの
[35:37.30] おおむね刺激的な時間だった。
[35:40.92] はじめこそ彼の姿に面食らっていたけれど
[35:44.90] 数日のうちに物珍しさはなくなった。
[35:49.15] あいかわらずガラスの反射で
[35:51.59] ブリキの中は覗けないけれど。
[35:54.63] 彼は真面目で
[35:56.36] 好奇心旺盛で
[35:58.26] なにより正直だった。
[36:01.62] はじめから
[36:02.96] 噓も誤魔化しも覚えない生き物のように。
[36:08.81] 「読み終えました
[36:11.16] 感想を口にしてよろしいでしょうか?」
[36:14.80] 丁寧に訊ねられて
[36:16.75] 緊張気味に頷いた。
[36:19.82] 昔話を文字に起こしただけとはいえ
[36:22.98] なかなかに気恥ずかしいものがあるのである。
[36:27.63] 「どうぞ。お手柔らかにお願いします」
[36:32.10] 「私の知っていたものとは大分違いますが
[36:35.44] たいへん楽しませていただきました。
[36:39.18] この彼女は、実に可愛らしい方ですね」
[36:43.78] 「そうかしら。
[36:45.62] 少し無防備というか
[36:47.87] 平和すぎると思うんだけど。
[36:50.66] どのへんが気に入ったの?」
[36:53.48] 「行動に揺らぎがありません
[36:56.14] 正直な人だったのでしょう。
[36:58.59] 周りが見えていなかったのは
[37:00.69] 一つの事だけを信じたからです」
[37:04.38] 「ずいぶんと肩入れするのね
[37:06.59] そんなの
[37:07.69] わたしの本だけじゃ断定できないのに」
[37:11.01] 「できますよ
[37:13.22] ひとかけらの後悔も見られませんでしたから。
[37:17.44] 彼女から読み取れるのは
[37:19.48] 最後まで幸福であった事実だけです」
[37:23.91] わたしは押し黙ってしまう
[37:26.90] そんなつもりはなかったのだ。
[37:29.20] わたしはむしろ
[37:30.59] 反感をこめて筆をとっていたはずなのに。
[37:35.30] わたしから見れば
[37:37.11] この本はひどい物語だ。
[37:40.83] そう
[37:42.69] 子供の頃から
[37:44.19] おばあちゃんの話には疑問があった。
[37:47.59] 尽くした末に捨てられたのに
[37:50.24] どうして彼女はあんなにも幸福だったのか。
[37:55.25] 裏切られてもかまわない献身が愛だというのなら
[37:58.99] わたしはやっぱり
[38:00.73] そういうものとは反りが合わないと思う。
[38:05.32] 「わたしは悲劇として書いたつもりなんだけど」
[38:09.91] 「彼女の主観は、貴方の主観です
[38:14.20] 貴方たちはそういう生き物だ。
[38:17.20] 母方の記憶を自分のものとして受け継いでいます
[38:21.78] ですから、どんなに反感を持っていても
[38:25.47] この物語の根本からは逸脱できない。
[38:29.40] 貴方がどう思おうと
[38:31.38] 貴方の遺伝子には
[38:33.21] 原初の気持ちが刻まれているのです」
[38:38.01] 「……よく分からないけど
[38:40.73] お眼鏡にかなった、ってコトでいいの?」
[38:45.17] わたしの声は少しだけ不機嫌だった。
[38:48.68] 彼はこくん、とブリキの頭を上下させる。
[38:54.13] 「私の期待とは違いましたが
[38:56.91] それ以上のものを頂きました
[38:59.63] お気に入りの一冊です」
[39:02.41] 「期待? 何を期待していたの?」
[39:06.75] 「珊瑚の話です
[39:09.57] 私の国からでは
[39:11.53] この島の珊瑚はとても不思議に映るのです。
[39:15.82] どうしてこの島の珊瑚は光るのか
[39:19.27] 貴方なら知っているかと思ったのですが」
[39:23.99] この島唯一にして、最大の特産品。
[39:28.66] 満月の夜に光る珊瑚。
[39:32.41] 珊瑚のカタチをしたあの樹木たちは
[39:35.73] 周期的に大量の酸素やら
[39:37.92] 窒素やらを生みだしている。
[39:40.44] 結果として
[39:41.98] 少しだけ人間の歴史を延命させているそうだけど
[39:45.99] そんなのはどうでもいい話だし。
[39:49.44] わたしにとっても別段
[39:51.50] とりあげる事項ではなかったのだ。
[39:55.58] 「貴方たちにとって
[39:57.53] 明かりを灯す珊瑚は当たり前のものなのですね。
[40:02.33] おそらく
[40:03.66] あの発光はただの生態機能でしょう
[40:07.04] こういった偶然もあるのだと判断します」
[40:11.21] それだけ言って
[40:12.72] 彼は舟の中に隠れてしまった。
[40:16.01] いや、潜っていった。
[40:19.78] ほどなくして
[40:21.17] 彼は自分と同じぐらいの大きさの包みを
[40:23.79] 引っ張り出してきた。
[40:26.24] 「もうどこに届けていいものか困っていましたが
[40:30.00] 調べた結果
[40:31.50] 貴方が受取人に該当するようです。
[40:35.06] これは取引ですが、私の職務でもある
[40:39.34] どうぞ、お受け取りください」
[40:43.01] 包みには貝殻が一つ
[40:46.14] 真っ白い、銀河星雲のような貝殻だ。
[40:51.01] わたしは直感的に貝殻を耳にあてた。
[40:55.88] ざあ、ざあ。
[41:00.49] 巻き貝の渦巻き構造
[41:03.17] オルガン官の螺旋が
[41:05.03] 波の音を反響させる。
[41:08.52] ざざ、ざざ
[41:11.65] CQCQ、聞こえますか。
[41:16.78] 波のざわめきの後から
[41:19.06] 静かな記録が伝わってくる。
[41:22.90] ……ああ、これはレコーダーだ。
[41:27.77] 何処か、遙か、見知らぬ人の物語を
[41:32.93] 音として記録している。
[41:36.48] 「私には意味が分からないものです。
[41:39.62] 一日預けますから
[41:41.64] 気に入ったのなら貰ってください
[41:43.89] その本と引き替えです。
[41:46.24] それでは明日」
[41:49.11] 小さな彼は舵を握って
[41:51.85] 船頭を空に向ける
[41:54.46] わたしはあわてて声をかけた。
[41:57.21] この者の加速力
[41:59.17] 機動性はなかなかに侮りがたく
[42:02.06] 目を離すと一瞬で飛んでいってしまうのだ。
[42:05.26] 悔しいことに
[42:06.95] 捕まえられたコトは一度もない。
[42:10.54] なんでしょう?と振り返る彼に一言。
[42:14.83] 「評価をまだ聞いてない。それで、点数は?」
[42:20.11] 「いやだな。
[42:22.10] 本に点数をつけるなんて
[42:24.55] できませんよ」
[42:26.71] 照れくさそうに言って
[42:28.80] 舟は西の空に消えていった。
[42:32.44] はじめて聞いた
[42:34.60] 感情のこもった
[42:36.66] 人間らしい声だった。
歌词翻译
[00:00.00] 《月之珊瑚》
[00:02.42] 奈须蘑菇
[00:04.17]
[00:05.45] (一)
[00:08.19] 我的话或许有些难以置信。
[00:11.16] 我的奶奶,
[00:12.95] 似乎来自月球。
[00:16.79] ◆今年终于要结束了。
[00:20.76] 今天是第11个满月之夜。
[00:23.23] 再有一个月,这一年就会逝去,
[00:26.06] 然后迎来一个没有任何计划的第二年。
[00:30.61] 在那以前,我们的生命
[00:33.96] 甚至不如那只透明的水母有保障。
[00:38.06] 对于现在的人类来说,
[00:40.26] 太阳和月亮已经是失去的东西。
[00:43.42] 死亡一词,适用于万物。
[00:48.07] 据说,
[00:49.80] 以前的人类,
[00:50.86] 具有更积极的价值观。
[00:54.42] 似乎在他们看来,
[00:58.26] 光阴不是在一味地消耗,而是在循环和轮回。
[01:02.65] 简单的说,就是重复使用相同的信息。
[01:05.99] 节约也要有个限度。
[01:08.40] 虽说过去的人类相当奢侈,
[01:11.52] 但在我们看来,却是相当的节约。
[01:16.54] 现在是公历,大概3000年左右。
[01:21.89] 人类的文明早已结束,
[01:24.46] 他们那些习惯性的行为也不再得到保障,
[01:27.66] 同时带来的是,再也不会发生冲突,
[01:31.28] 人类花费数千年构筑的文明,
[01:34.65] 全部化作一场空;
[01:37.44] 我无视了第十几次的求婚,
[01:42.02] 今天也和往常一样,
[01:43.69] 在岛屿的高处眺望海岸线。
[01:49.12] 「天空映水。水映天空。
[01:52.81] 月空之下,碎海无垠。」
[01:58.25] 望着闪烁的大海,
[02:00.56] 我不经意间哼起了
[02:02.00] 奶奶曾经教我的歌。
[02:05.20] 准确的说,
[02:06.45] 这首歌是从
[02:07.99] 我奶奶的奶奶那里传下来的,
[02:10.12] 虽然我能明白表面上的意思,
[02:12.35] 却无法理解真正的含义。
[02:15.89] 这么说可能像是在说祖母的坏话,
[02:18.85] 但我还是觉得这首歌太少女了。
[02:21.94] 当时祖母的生命已所剩无多,
[02:24.44] 却还是像梦中人一样。
[02:28.72] 我的妈妈还有祖母,
[02:30.49] 甚至是祖母的妈妈,都有着相同的兴趣,
[02:33.25] 而且也都是
[02:34.70] 非常漂亮的人。
[02:38.19] 可惜的是,
[02:39.70] 我却有些老土。
[02:42.52] 我不仅没有妈妈那般美丽,
[02:45.30] 还缺少少女感。
[02:48.27] 这样的我,求婚者却络绎不绝,
[02:51.38] 一切都多亏了这座岛屿。
[02:56.00] 「咦。有岛的客人准备离开了吗」
[03:02.15] 吹着风,看向天空的时候,
[03:04.96] 一架漆黑的飞机正好起飞。
[03:09.02] 轰——。飞机发出沉闷的声音
[03:13.58] 最后的文明,或者说文明的遗迹,
[03:17.56] 遮住了月光,缓缓离开大地。
[03:20.72] 钢铁的身躯,逐渐散发出光芒,
[03:24.95] 向东方的天空飞去。
[03:29.16] 击落完毕,这是第16个人。
[03:34.00] 而且这次还刷新了记录。
[03:37.12] 我提出比以往更加过分的难题,
[03:40.61] 只用一天,就赶走了求婚者。
[03:45.00] 岛上的愤怒更是前所未闻,
[03:48.42] 可是只有今天拿我没办法。
[03:50.94] 都是这个在满月当天来访的人的错。
[03:54.13] “给我看看气氛啊”,说的就是你这种人。
[03:58.14] 氧气都变得稀薄了,
[04:00.38] 想要谈情说爱的话,你至少要有点常识。
[04:05.67] 我住的小岛,
[04:07.54] 是一个人口不足50人的小部落。
[04:12.02] 都市所在的内陆,则是隔着大海,在遥远的另一边。
[04:16.91] 这座岛没有港口,
[04:19.18] 月牙状的海岸上,
[04:21.40] 却有一片独特的珊瑚礁。
[04:25.78] 对岛上的人来说,
[04:27.71] 珊瑚礁没什么特别的;
[04:30.87] 对都市的人来说,
[04:32.85] 珊瑚礁却似乎比宝石更有价值。
[04:36.49] 从奶奶那个年代开始,
[04:38.42] 这座岛就被当成了圣地。
[04:42.41] 禁止从海上入岛,
[04:45.57] 只有携带贵重物品的人
[04:47.71] 才能通过飞机登陆。
[04:50.88] 我被称为公主,
[04:53.73] 也是因为对于内陆的人来说,
[04:55.61] 这座岛是特别的。
[04:59.55] 他们把这里称为“复兴人类的希望之星”
[05:04.93] 可是对我们来说,
[05:08.46] 这只不过是极为普通的日常,
[05:09.93] 是随时了结也不奇怪的环境。
[05:14.66] 「可惜了。
[05:16.68] 即使能飞在天上,
[05:18.39] 也无法得到月球上的游鱼啊」
[05:22.67] 每一次,
[05:24.64] 我都会向求婚者提出难题。
[05:27.98] 这次的题目是,月球上的鱼。
[05:32.80] 月球是,有去无回的世界,
[05:36.12] 世界上似乎还残留着去月球的方法,
[05:39.10] 可是却没有记载回来的方法。
[05:42.58] 想去月球的话还是很现实的,
[05:44.89] 可是想要回来,却没有办法。
[05:48.03] 这是在活着的时候,
[05:50.66] 可以实际看到的死的世界。
[05:54.51] 仅仅是让对方去月球,
[05:55.66] 就很严厉了,
[05:58.21] 而且还要
[05:59.30] 让对方
[06:00.11] 拿回不可能存在游鱼,
[06:02.61] 也难怪有岛的客人会被气跑。
[06:06.90] 可是,
[06:09.14] 我发誓我是认真的。
[06:12.31] 无论是谁,只要能解决难题,
[06:14.23] 我都愿意献出自己的一生。
[06:17.57] 因为,只有这样,
[06:19.42] 我才能衡量自己的爱。
[06:23.27] 这颗星球失去了太多的东西,
[06:26.76] 其中失去最多的是,
[06:28.74] 爱人的感情。
[06:32.99] ◆在月球成为死的世界以后,已经不知过了多少年。
[06:37.03] 不,
[06:38.17] 更准确地说,对人类而言,月球从一开始就是死的世界,
[06:41.82] 现在只不过是恢复了原本的面貌。
[06:45.34] 月球移民计划
[06:47.58] 是应对人口过剩问题的其中一部分。
[06:51.84] 月球成为新的开垦地,
[06:54.75] 移居的人类在月球表面建造了都市,
[06:57.69] 甚至建立了国家。
[07:00.88] 可是在这以后,一场大灾害降临。
[07:06.00] 地球上也因为移极的影响
[07:09.46] 面临十分严重的情况,人类所面临的,
[07:13.42] 是更加绝对的、无形的结局。
[07:17.01] 怎么说呢。
[07:19.67] 人类、突然失去了热情。
[07:26.18] 是对开拓的热情、
[07:28.82] 对解答的热情,
[07:31.05] 还有对繁殖的热情。
[07:34.15] 这并非只是我家孩子闭门不出的程度,
[07:36.63] 而是在全人类的规模上,
[07:38.55] 出现一种
[07:40.14] “怎样都无所谓”的态度。
[07:43.33] 地球上的人们
[07:45.43] 将文明硬推给了另一侧的人。
[07:50.16] 地球上即使没有文明也能生存。
[07:53.36] 可是,月球却无法做到。
[07:58.01] 所以地球上的人,以一种
[08:00.47] “保存人类智慧的任务就交给你们了,
[08:04.71] 我们呢,说真的已经烦透了。”
[08:08.71] 的态度,
[08:10.43] 把一切托付给了月球。
[08:13.86] 在那以后,
[08:15.37] 仅仅过了半个世纪,
[08:16.96] 月球与地球再无往来。
[08:20.20] 无论是哪边的人类,
[08:22.00] 都再也没有可以交换的东西,
[08:23.94] 所以互相切断了来往。
[08:26.52] 地球这一边,
[08:28.43] 靠着现有的资源也能勉强运转。
[08:30.98] 月球也一样,
[08:32.39] 必要的环境也已经建设完成。
[08:37.05] 月光的消失,
[08:39.61] 似乎发生在中止联系后的十几年。
[08:43.73] 另一边,地球的人口锐减。
[08:48.75] 毕竟失去了繁殖的热情。
[08:52.12] 放着不管的话,50年就会绝种。
[08:57.15] 在这种情况下,却还能生存下来,
[08:59.75] 完全是因为那十分之一,
[09:02.09] 仍然怀有好奇心,仍在努力的人。
[09:07.31] 那些明明顾及自己就已经筋疲力尽,
[09:09.48] 却还能分出一份关心,态度认真的人。
[09:13.72] 这些“过去”的人
[09:16.96] 聚集的生活圈,
[09:19.51] 被称为都市。
[09:22.17] 由于我没去过,所以不太清楚
[09:26.18] 但我知道一个名字——“人类复兴委员会”
[09:30.11] 这是一场让生命恢复根源的运动。
[09:34.28] 他们将原理称为爱。
[09:37.63] 对此我真的毫无头绪。
[09:41.51] 并非是觉得恶心,
[09:43.70] 而是我真的无法想象
[09:46.50] 互相牵挂的样子。
[09:49.70] 这种行为真会让心情愉悦吗?
[09:54.47] 肯定只会产生问题。
[09:56.97] 我认为更加系统化的互助
[10:00.24] 才会更加让人开心。
[10:03.08] 因为在这里面有规划、
[10:05.07] 有明确的分工、能让人安心。
[10:09.28] 试图理解对方无形的心灵,
[10:11.82] 才不切实际。
[10:16.98] 所以。
[10:18.98] 每当有人求婚,
[10:20.82] 我都会给求婚者提出难题,
[10:23.14] 是因为自己无法衡量爱,
[10:26.23] 希望对方能替我衡量。
[10:30.51] 如果有人得到了比我更有价值的东西,
[10:33.24] 还能与我交换,
[10:35.62] 就能证明
[10:37.38] 那个人真的需要我。
[10:42.11] 我喜欢男人,也喜欢人类,
[10:45.12] 可唯独理解不了爱。
[10:47.82] 这样的我,也有自己的幸福。
[10:50.69] 毕竟我们只要有太阳和水,还有空气,
[10:53.27] 就能勉勉强强活下去。
[10:57.51] 啊,
[10:58.70] 真讨厌,就是因为这样,
[11:01.98] 人类才会终结的吧。
[11:06.65] 「群星闪闪放光,大海沙沙作响
[11:10.92] 恋慕之情令珊瑚讴歌。
[11:14.14] 我们宛如一只只水母,
[11:16.72] 轻飘飘地将日子重复」
[11:21.10] 漆黑的原野上,我在哼唱的同时,
[11:23.25] 也轻快地踏起了舞步。
[11:26.84] 「咦。把人生比作了水母,真是坚韧。」
[11:34.40] 一道声音打断了我的独白。
[11:38.13] 那声音像是被无形的薄膜遮掩,
[11:40.65] 但可以听出是个男人的声音。
[11:44.84] 「不好意思。你是...对吧?」
[11:51.50] 听到名字以后,我转过身体,
[11:54.19] 眼前漂浮着一个奇异的物体。
[11:57.51] 那是一个饭盒袋大小的
[11:59.98] 铁皮载具。
[12:02.11] 就像是盛放刺身的船形容器。
[12:05.39] 在船上,
[12:07.02] 好像乘坐着一个铁皮玩偶。
[12:11.55] 玩偶的表面像水壶一样光滑,
[12:15.33] 到处光秃秃的。
[12:18.31] 面部虽然有一个透明的孔,
[12:22.63] 但在月光的反射下,
[12:24.81] 我看不见里面的样子。
[12:28.01] 无妨,
[12:29.35] 既然叫了我的名字,
[12:31.40] 那我就必须回礼。
[12:34.27] 「晚上好。初次见面,
[12:37.42] 应该没错吧?」
[12:39.29] 「您客气了。我是…」
[12:44.68] 铁皮的他拿出了一张小纸片。
[12:49.74] 虽然还不知道是做什么用的,
[12:52.91] 既然他礼貌地递给了我,
[12:55.06] 那我也要恭敬地收下。
[12:58.82] 「你来自岛外吗?」
[13:01.29] 「没错。我是来见您的。
[13:05.21] 您不介意的话,
[13:06.82] 我们可以谈谈吗?」
[13:11.08] 这一次轮到我瞪大眼睛,
[13:13.89] 露出了这样有失礼节的表情,不由得让我眨了眨眼。
[13:17.90] 新的求婚者。真稀奇。
[13:22.74] 我见过许多的人,
[13:25.14] 能放在手心上的还是第一次见。
[13:28.99] 「不,我是工作是派件。
[13:33.30] 造访这座岛有一半是因为工作,
[13:36.47] 另一半则是因为个人爱好」
[13:39.58] 这段仿佛被薄膜遮掩的声音
[13:41.89] 好像来自铁皮内部。
[13:45.86] 轻飘飘的小船,
[13:48.61] 还有从未见过的来访者。
[13:52.00] 我无法抑制住好奇心,
[13:54.40] 一不小心,比起对话,更加沉迷在观察之中。
[13:59.62] 铁皮的他丝毫没有在意,
[14:02.55] 而且问起了问题,像是现在的时间,
[14:06.60] 现在的年代,现在的气候。
[14:09.84] 他似乎是想要闲聊。
[14:13.10] 我自然是随意作答。
[14:15.65] 结果就是完全没能成立对话。
[14:19.55] 没过一会儿,他就把话问完了。
[14:22.86] 小小的他疑惑地挠了挠脑袋。
[14:26.91] 我对自己的任性感到脸红,
[14:30.45] 开始提供对话内容。
[14:33.44] 「刚才,你说有一半是因为个人爱好?」
[14:37.63] 「没错。因为我还是个商人。
[14:41.36] 所以拜访您也是其中的一环。
[14:44.84] 我想要和您
[14:46.78] 交换物资,
[14:49.80] 您看如何?」
[14:52.02] 他表示
[14:54.92] 自己是来购入必要物资的。
[14:57.50] 这反倒让我陷入苦恼。
[15:00.18] 因为
[15:01.28] 这位稀客想要的东西,
[15:04.19] 这座岛上根本不可能有。
[15:07.28] 「你要找别人。
[15:09.31] 我没有
[15:10.54] 那么贵重的东西」
[15:13.96] 「不。商人的原则就是,
[15:17.08] 购买稀有的
[15:18.63] 东西。
[15:20.40] 贵重物品,
[15:22.76] 我有的是。
[15:25.21] 所以,我想要稀有的东西。
[15:29.36] 你有故事吗?
[15:32.00] 那种从未有人听过,
[15:33.46] 从未出版的故事」
[15:36.78] 我又一次
[15:38.61] 没有理由地
[15:40.48] 盯住了他。
[15:45.03] 是因为他有着大人般的冷静,
[15:47.61] 却提出了像小孩子一样的要求吗。
[15:51.78] 他的话啪嗒一声,落在了我心里。
[15:55.55] 要是放在平常,
[15:58.07] 我一定会觉得他在耍我,
[16:00.14] 但是现在我却非常自然地接受了,
[16:04.62] 「那么,我这里有一首
[16:06.31] 你想要的歌。
[16:08.78] 这首歌是奶奶教给我的,
[16:11.52] 可以吗?」
[16:13.62] 「亲口传授更有价值。
[16:17.30] 但是很抱歉,
[16:19.43] 我无法正确理解你们语言。
[16:23.56] 可以写成文字吗,虽然会有些麻烦。」
[16:27.74] 铁皮的他
[16:29.42] 似乎不怎么理解我们的语言。
[16:32.67] 这么一想,其实刚刚的对话并不流畅,
[16:36.16] 令我吃惊的是,
[16:37.73] 在这种情况下我们也能对话。
[16:42.63] 「做不到。我、不识字」
[16:47.26] 「好吧,我知道了。
[16:51.18] 这么说或许有些冒犯,
[16:53.66] 让我教你识字吧。
[16:57.26] 我会在下个满月的日子离开,
[16:59.08] 只要在那以前写成书就可以了。」
[17:02.98] 他拍着胸脯说道。
[17:06.41] 似乎是在表达交给他吧。
[17:09.62] 有点不可靠。
[17:12.49] 平日的懈怠居然会在今天遭到报应。
[17:16.07] 人类早就结束了,
[17:18.47] 我的人生却波澜依旧。
[17:22.30] 算了,暂且无视吧。
[17:26.49] 「话说,你为什么觉得水母是坚韧的。」
[17:33.04] 「在许久以前,
[17:35.92] 有一种水母,
[17:37.51] 解决了细胞死亡导致老化的问题。
[17:41.83] 是少数实现了永恒的动物。
[17:46.64] 所以水母
[17:48.50] 是一种相当顽强的生命」
[17:51.73] 他果然用冷静的口气
[17:53.68] 回复了一段有点小难的内容。
[17:57.92]
[17:59.64] (二)
[18:02.53] 在很久很久以前。
[18:05.73] 在一片被称为阴影之海的荒野上,
[18:09.20] 出现了一块
[18:11.23] 少女模样的石头。
[18:14.81] 她有着美丽的亚麻色头发,
[18:17.38] 天真烂漫的眼睛,粉嫩的嘴唇。
[18:22.76] 柔软优美的手脚,就像人类一样。
[18:26.82] 肌肤犹如打磨过的石灰,
[18:30.86] 完美无瑕。
[18:34.15] 那是通过统计人类美学意识,才能得到的,
[18:38.65] 受世人所爱的少女模样。
[18:43.18] 石头原本就是这个模样吗?
[18:46.34] 还是说,是后天形成的?
[18:50.53] 就连皮格马利翁的传说,
[18:52.54] 在她眼前也不过是遥远异国的传说。
[18:55.90] 能够肯定的是,
[18:58.07] 她是一位与生俱来的公主,
[19:01.18] 在无数人的敬仰下,
[19:03.54] 她苏醒了。
[19:07.04] 世界是一片荒野,
[19:10.25] 唯独她的身边,有着没过脚踝的湖水,
[19:15.28] 以及刚刚盛开的鲜花。
[19:19.02] 当然,
[19:20.23] 这也是由石灰雕刻的赝品。
[19:25.46] 天空凝结成冰、冰也构成了天空。
[19:30.81] 有人向她许愿望,
[19:32.49] 希望这颗寒冷的星球
[19:35.11] 能被温暖的冰笼罩。
[19:38.16] 是谁许的愿,
[19:40.94] 现在已不得而知。
[19:44.33] 在她诞生之时,周围还有许多的人类,
[19:47.97] 但在一场短暂的假寐过后,
[19:50.75] 所有人都消失了。
[19:55.54] 因为自己变成了孤身一人,
[19:58.01] 所以她愉快地做出了许多种假设。
[20:01.74] 首先是,因为系统缺陷,大家都死了。
[20:06.55] 可她还活着,
[20:07.56] 所以假设不成立。
[20:11.62] 必需的物品至今仍然在补充,
[20:14.76] 应该不是因为系统事故导致全灭。
[20:18.80] 下个假设是,大家睡着了。
[20:23.29] 因为大家觉得醒着很麻烦,
[20:26.06] 所以一起合上了双眼的
[20:27.94] 可能性很高。
[20:31.08] 没办法,她试着将感觉覆盖星球表面,
[20:35.28] 却没找到任何人类的反映。
[20:38.49] 他们真的
[20:40.46] 从这个国家消失了。
[20:44.92] 在一次次的推测中,
[20:47.98] 她突然读起了这个国家的法律。
[20:52.91] 法律说,禁止这边的居民
[20:57.17] 与那边的居民恋爱。
[21:01.39] 破坏规则的人要接受处罚,
[21:03.10] 流放到地球上。
[21:06.44] 或许
[21:08.13] 大家是因为违反这条法律,
[21:10.69] 去了那一边。
[21:14.91] 嗯,她点了点头。
[21:19.29] 实际上,头部纹丝未动,
[21:23.27] 只是在心里点点头。
[21:26.43] 认为这种推测的可靠性最高。
[21:31.54] 虽然有了答案,但她是个认真的人,
[21:34.97] 所以会继续完成大家托付的事情。
[21:38.34] 首先是阻止多余的元素输送至都市里。
[21:43.09] 现在已经不需要娱乐设施了。
[21:46.48] 将多余的部分用于调整环境。
[21:50.99] 阴影之海经过半个世纪,
[21:53.93] 已经是一个完善了树木与天空的都市。
[21:58.34] 树木由石灰筑成,
[22:00.34] 天空则是用冰覆盖的赝品,
[22:03.87] 总之我完成了你们的要求。
[22:07.60] 人们期待的东西,
[22:09.98] 只要没有人,
[22:12.33] 就能轻而易举地完成。
[22:16.71] 距离在月球上制作7片海洋以后,又过了半个世纪。
[22:22.26] 结果还是没能见到人类的踪影,
[22:26.08] 本以为实现他们的愿望以后,他们就会回来。
[22:30.22] 无声的世界里,孤身一人。
[22:33.56] 有时候,我甚至会觉得
[22:37.76] 真相并非是人类被流放了,
[22:41.60] 而是我自己被流放到这颗星球。
[22:46.19] 假设归假设,
[22:48.10] 但也绝非不可能。
[22:51.78] 她抬头看向反射在冰面上,
[22:54.08] 在这里却绝对看不到的
[22:56.90] 蓝星。
[23:00.63] 人们是前往那颗星球了吗?
[23:05.29] 我好不容易创造了一片美丽的森林。
[23:09.06] 却没有任何人来看,
[23:11.63] 真是白费力气。
[23:16.15] 毕竟,
[23:18.26] 她自己也对这片森林没有任何感情。
[23:23.08] 某一天。
[23:25.99] 沙子上的动静唤醒了我。
[23:29.31] 话说回来,前段时间,
[23:31.44] 也有个东西
[23:32.17] 啪的一下碰到了身体上。
[23:37.36] 令我吃惊的是,
[23:39.32] 在我苏醒后,
[23:41.08] 有东西正在从林荫道上走来。
[23:45.40] 它有着胖墩墩的体格。
[23:47.90] 活动范围狭小的步伐。
[23:51.09] 和自己一样,
[23:53.39] 甚至更光滑的单色皮肤。
[23:56.68] 就像个铁皮做的水壶,
[24:00.46] 一只几乎脱离了世间美学的
[24:03.70] 搞笑生物。
[24:08.02] 她在震惊之余,
[24:10.95] 也感到了一股未知的体验。
[24:14.15] 因为这是第一次,
[24:17.49] 终于有外星人来到这个星球!
[24:21.94] 「等等,
[24:23.17] 不对。
[24:25.01] 月面上怎么会有外星人?」
[24:28.75] 嗯,这倒是她误会了。
[24:35.54] ◆来到此处的是地球上的人类。
[24:41.06] 说是外星人也没有错,
[24:45.34] 和以前的人类一样,
[24:47.67] 无法交流。
[24:50.81] 因为她没有喉咙。
[24:55.19] 不过没关系,她和往常一样,
[24:57.89] 开始解读起了他的自言自语。
[25:01.52] 能从他的话里了解到一些事情。
[25:04.37] 他不顾周围的反对,
[25:07.35] 自己一个人来到这颗星球。
[25:11.79] 抵达这里本身并没有意义。
[25:14.67] 没有启程的理由,
[25:16.20] 也没有回报。他独自一人进行这段单程旅途。
[25:23.00] 「是吗,即使有生存物资,
[25:27.42] 也无法消除精神上的不足。
[25:31.70] 自我毁灭,不愧是地球的先进文明」
[25:37.74] 他使用都市里的器材,
[25:40.12] 自顾自开始了生活。
[25:42.98] 一个悠闲自得的家伙。
[25:47.53] 他每隔十二小时就会来到她的身边,
[25:51.57] 在储罐充满氢以前,
[25:54.23] 他都会自言自语。
[25:57.19] 「有着人类的外表,
[26:00.10] 就要强加上人类的文化,
[26:01.88] 这是否是一种傲慢呢」
[26:04.88] 他一边说着,
[26:06.26] 一边试着脱下她的裙子。
[26:09.60] 她使出全力阻止了他的行为。
[26:13.05] 你可能不信,
[26:15.40] 她的身体居然能按自己的想法行动,
[26:19.64] 会不会是多亏了这件事呢。
[26:23.52] 「昨天你对我做了很过分的事情。
[26:26.52] 我差点飞到火星去了。
[26:30.02] 如果这是地球,
[26:31.80] 你已经坐牢了。
[26:34.46] 看来必须得
[26:36.29] 教你点人类的人情世故。」
[26:40.49] 他一副理所当然的样子,在接受她帮助的同时,
[26:44.44] 还说出这么刻薄的话。
[26:48.49] 即使如此,他的说的一切都是那么新鲜,
[26:51.40] 能从他的身上感到一股难以想象亲切感。
[26:55.09] 这种情况下,
[26:56.77] 看谁都是个好人,
[27:00.26] 更加不可能追究对方。
[27:04.01] 对她来说,他就是崭新的世界。
[27:09.35] “这么优秀的人,
[27:11.69] 为什么会来到这个死的世界呢?”
[27:15.18] 难以置信,
[27:17.63] 她居然会为他
[27:19.53] 心痛到这种地步。
[27:23.82] 无数假设中,最有可能的是,
[27:27.90] 他和其他人一样。
[27:34.28] 这里的居民爱上另一边的居民
[27:39.04] 会被流放。
[27:41.32] 同样的,
[27:43.32] 他应该也是爱上了这边的居民,
[27:46.45] 才会到这里来。
[27:50.76] 可笑的是,
[27:53.19] 这里的人已经消失了。
[27:57.82] 他为爱而来,
[28:00.48] 却无法回到原本的世界。
[28:05.36] 她感到悲伤,
[28:07.72] 想着至少要给他一个好的生活环境,
[28:09.10] 表现得比以前更勤奋。
[28:13.44] 可他却说
[28:15.69] 「浪费资源不好。
[28:18.13] 无限地使用,
[28:20.09] 万一见底了怎么办。
[28:22.74] 如果你枯竭了,
[28:24.72] 我也会完蛋」
[28:27.73] 她总是在白费工夫。
[28:32.30] 最近我学会的人类的语言,
[28:35.28] 我模仿出发声器官尝试说话,
[28:38.35] 他却不打算听。
[28:41.41] 不如说,
[28:42.55] 我说话越像人类,
[28:45.92] 他越讨厌我
[28:50.08] 她为了他准备了各种各样的东西。
[28:55.29] 她从未有过这么努力。
[28:58.80] 努力的程度甚至可以
[29:00.66] 扭曲生命的原理,扭曲原子的法则。
[29:05.69] 已经无须说明了吧。
[29:10.26] 她就是那么的爱他。
[29:16.05] “他是个非常优秀的人。
[29:19.09] 他为我这颗石头,
[29:21.60] 赋予了生命的定义”
[29:25.77] 那怕到了现在,
[29:26.83] 他的那些话仍然铭记在众多珊瑚上。
[29:31.20] 可是他却从不道谢,
[29:33.40] 只是一味的消费。
[29:37.17] “我是不是有点像是人类了?”
[29:41.41] 像是在和谁说话一样,她在冰面下跳起了舞。
[29:46.24] 这件事发生在她的双脚,
[29:50.31] 第一次从地表上解放的那天。
[29:54.63] 「要我说的话,
[29:56.53] 你的身体就像珊瑚一样」
[29:59.79] 回想起来,
[30:01.41] 这是他第一次夸奖我。
[30:06.11] 不对,奶奶,
[30:09.07] 这不是夸人的话。
[30:11.62] 这是在挖苦。
[30:14.93] 但她似乎
[30:16.61] 对这句话感到
[30:18.55] 非常非常开心。
[30:22.03] 在这以后的12小时,
[30:24.49] 她一直在对自己不断产出硅的身体感到自豪。
[30:30.98] 两个人一起
[30:33.73] 度过了半年的时间。
[30:37.04] 结束的那天简简单单到来。
[30:40.40] 他修好飞船后,
[30:43.04] 就把她抱进了飞船。
[30:48.05] 她最近身体虚弱,
[30:50.90] 无法活动,
[30:53.42] 乘船
[30:54.72] 以及之后的工作
[30:56.16] 都交给他处理。
[31:00.63] 虽然,对离开阴影之海感到不安,
[31:03.82] 但是有他在就让她很高兴。
[31:07.98] 她在乘坐在
[31:09.51] 只能容下一个人的狭小空间内,
[31:12.90] 幸福地闭上眼睛。
[31:17.09] 「我讨厌人类,
[31:19.23] 所以舍弃了一切,
[31:21.21] 来到月球」
[31:25.08] 飞船外传来声音。
[31:28.61] 至今为止从未有人出现,
[31:31.11] 未来也不会有人出现的荒野上,
[31:33.66] 传来了声音。
[31:37.99] 「这样的我,没有理由爱人」
[31:43.52] 我的身体动不了。
[31:45.83] 而且门也打不开。
[31:50.19] 她已经离开了星球,
[31:53.15] 所以星球不会再为我运转。
[31:56.47] 覆盖星球的冰空,
[31:59.34] 如梦般破碎。
[32:03.16] 「你对我展现的好意,
[32:06.00] 我不认为是爱情。
[32:08.32] 只是因为你不知道什么是人」
[32:13.40] 她的脸贴在窗口上,
[32:16.20] 想起了那条忘记了的法律。
[32:19.53] 如果爱上那边的人,
[32:22.59] 作为惩罚,将永远离别。
[32:27.62] 「如果只想满足野性的感情,
[32:30.90] 那么那片土地上,有无数适合你的人。
[32:34.99] 你只要活在那边就行了」
[32:38.69] 啊,她感到悲伤,
[32:42.42] 他要留在这里。
[32:44.94] 与此同时
[32:46.25] 她也明白,这对他来说
[32:49.81] 是最好的选择。
[32:53.47] 「但是。不管怎样,
[32:57.03] 你对那个星球来说,并非什么好事。
[33:00.64] 我又一次
[33:03.18] 杀死了地球上的人类。」
[33:06.65] 在以前的她看来,飞船只有小小的火花。
[33:11.17] 可是现在却迸发着
[33:12.81] 可怕的光与热、
[33:16.06] 离开了地表。
[33:19.96] 银色的大地。
[33:22.94] 曾经属于她的世界,
[33:25.64] 现在却像陌生人一样越来越远。
[33:29.86] 几乎变化成人的她,
[33:32.70] 眼里的是渐渐缩小的星球。
[33:36.38] 它在黑色的海洋中,
[33:38.80] 孤单地闪烁着光芒。
[33:42.84] 虽然,
[33:44.37] 飞船已经航行在了蓝天中,
[33:47.30] 却没有给她流泪的机会。
[33:51.50] 他是个过分的人类,
[33:54.39] 没有考虑到她的安全问题。
[33:58.76] 飞船的燃料
[34:00.62] 只能支撑到进入地球重力圈,
[34:03.30] 却没有六倍重力下的
[34:05.41] 紧急迫降方案。
[34:09.07] 飞船在空中解体,
[34:11.77] 她把这当成一种恶劣的玩笑,
[34:14.74] 整个人倒着落入了蓝色的海洋。
[34:18.67] 这就是这座岛的起源。
[34:22.94] 她留下了一命,
[34:25.53] 坠落的冲击
[34:27.00] 却让记忆出现了缺失。
[34:31.61] 岛上也是在这个时候,诞生了新的珊瑚。
[34:36.42] 她在这里生活、
[34:38.64] 养育孩子、走完了自己的一生。
[34:43.95] 不过,每到满月的那个夜晚。
[34:47.40] 她看向天空的时候,
[34:51.77] 总会露出幸福的笑容。
[34:57.49] ◆就这样,我顺利完成了
[35:01.06] 我的首次创作。
[35:05.35] 「到处都塞着你自己的看法呢。
[35:08.71] 而且对部分人物的描写也有偏见。」
[35:14.30] 就像这样,
[35:15.80] 铁皮编辑
[35:17.09] 拒绝了我3次投稿。
[35:20.78] 不过,明天又是满月。
[35:23.01] 整整一个月
[35:25.23] 都在让小小派件员
[35:26.96] 教我写文章。
[35:30.90] 因为他无法很好地理解我们的语言,
[35:34.55] 所以偶尔会出现误解,
[35:37.30] 但是大部分时间都令人兴奋。
[35:40.92] 刚开始还对他的模样感到吃惊,
[35:44.90] 几天相处下来,已经不再觉得稀奇了。
[35:49.15] 虽然和以往一样,还是因为玻璃的反射
[35:51.59] 看不见铁皮内部,
[35:54.63] 但他不仅是个认真的、
[35:56.36] 好奇心旺盛的人,
[35:58.26] 还是个非常诚实的人。
[36:01.62] 好像是个生来就是
[36:02.96] 不会说谎和糊弄他人的生物。
[36:08.81] 「我读完了。
[36:11.16] 我能说一说感想吗?」
[36:14.80] 他礼貌地问我,
[36:16.75] 我紧张地点了点头。
[36:19.82] 尽管只是将口传的故事写成文字,
[36:22.98] 但还是让我感到不好意思。
[36:27.63] 「请吧。也还请口下留情。」
[36:32.10] 「你写的与我所知的有很大的不同,
[36:35.44] 读起来十分享受。
[36:39.18] 尤其是这位少女,真是可爱极了」
[36:43.78] 「是吗。
[36:45.62] 我倒是认为她有些不设防,
[36:47.87] 或者说,活得太安逸了。
[36:50.66] 你喜欢她哪点?」
[36:53.48] 「行动中没有任何动摇。
[36:56.14] 是一位诚实的人。
[36:58.59] 不关注周围的事情,
[37:00.69] 是因为她只坚信一件事。」
[37:04.38] 「你相当偏袒她呢。
[37:06.59] 你说的这些,
[37:07.69] 根本没法通过我写的内容判断吧」
[37:11.01] 「可以判断的。
[37:13.22] 我没有见到她有一丝的后悔。
[37:17.44] 我从她身上读到的,
[37:19.48] 是直到最后一刻都是幸福的事实。」
[37:23.91] 我沉默了。
[37:26.90] 我并没有打算这么写。
[37:29.20] 不如说,
[37:30.59] 我是带着反感在写作。
[37:35.30] 在我看来,
[37:37.11] 这是一篇残酷的故事。
[37:40.83] …是吗。
[37:42.69] 从小时候起,
[37:44.19] 我就对奶奶的故事抱有疑问。
[37:47.59] 明明付出了所有的心意,
[37:50.24] 却被舍弃了,为什么她还能那么幸福。
[37:55.25] 如果爱是即使被背叛也愿意献身,
[37:58.99] 那么
[38:00.73] 我果然没法认同。
[38:05.32] 「我原本是打算写悲剧的」
[38:09.91] 「她的观点,即是你的观点。
[38:14.20] 你们就是这样的生物。
[38:17.20] 将母系的记忆继承给自己。
[38:21.78] 所以,不管你有多么反感,
[38:25.47] 也无法逃脱这个故事的本质。
[38:29.40] 无论你有怎样的看法,
[38:31.38] 你的基因里
[38:33.21] 都铭刻着最原始的感情」
[38:38.01] 「…我不太明白。
[38:40.73] 可以当作是好的评价吗?」
[38:45.17] 我发出了有些不开心的声音。
[38:48.68] 他深深地点了点铁皮脑袋。
[38:54.13] 「和我期待的故事不一样,
[38:56.91] 但是,比我期待的要好得多。
[38:59.63] 我非常喜欢」
[39:02.41] 「期待?你在期待什么?」
[39:06.75] 「珊瑚的故事。
[39:09.57] 在我的祖国看来,
[39:11.53] 这座岛上的珊瑚十分不可思议。
[39:15.82] 我认为你可能会知道,
[39:19.27] 为什么这座岛的珊瑚会发光。」
[39:23.99] 这座岛上唯一的、也是数量最多的特产。
[39:28.66] 会在满月之夜发光的珊瑚。
[39:32.41] 那些有着珊瑚外观的树木,
[39:35.73] 周期性地
[39:37.92] 释放大量的氧和氮。
[39:40.44] 从结果上来看,
[39:41.98] 貌似稍微延长了人类的历史,
[39:45.99] 但是这并不重要。
[39:49.44] 对我来说,
[39:51.50] 没什么特别的。
[39:55.58] 「对你们来说,
[39:57.53] 珊瑚发光是理所当然的对吧。
[40:02.33] 恐怕
[40:03.66] 发光只是正常的生态功能。
[40:07.04] 我判断存在这种偶然」
[40:11.21] 他说完后
[40:12.72] 回到了小船内。
[40:16.01] 不对,应该说是潜入了小船。
[40:19.78] 不一会儿,
[40:21.17] 它拖出了一个
[40:23.79] 和他差不多大小的包裹。
[40:26.24] 「我正在为不知道应该送往哪里感到烦恼呢,
[40:30.00] 根据调查结果,
[40:31.50] 你似乎就是收件人。
[40:35.06] 这是交易,也是我的工作。
[40:39.34] 请收下」
[40:43.01] 包裹里是一个贝壳。
[40:46.14] 纯白色,宛如银河星云的贝壳。
[40:51.01] 我凭直觉将贝壳放在了耳边。
[40:55.88] 沙…沙…
[41:00.49] 海螺的螺旋构造。
[41:03.17] 螺旋风琴师,
[41:05.03] 演奏起了阵阵波涛声。
[41:08.52] 沙沙、沙沙
[41:11.65] CQCQ,听得见吗。
[41:16.78] 波浪沙沙作响过后,
[41:19.06] 听见了平静的记录声。
[41:22.90] ……啊啊,这是录音。
[41:27.77] 我会用声音,记录下发生在遥远的、
[41:32.93] 某个地方的、陌生人的故事。
[41:36.48] 「我不知道这个东西有什么意义。
[41:39.62] 暂时先放在你那里一天,
[41:41.64] 如果你喜欢的话就拿走吧。
[41:43.89] 用于交换这本书。
[41:46.24] 那么明天见」
[41:49.11] 小小的他握着船舵,
[41:51.85] 船头驶向天空。
[41:54.46] 我急忙叫住他。
[41:57.21] 这东西的加速力
[41:59.17] 和机动性真是不可小觑,
[42:02.06] 一转眼就飞走了。
[42:05.26] 真可惜,
[42:06.95] 我从来没逮住过它。
[42:10.54] 怎么了?他突然飞回来说道。
[42:14.83] 「我还没听到你的评价。还有,分数是多少?」
[42:20.11] 「不行。
[42:22.10] 给书打分,
[42:24.55] 我做不到」
[42:26.71] 他好像很害羞,
[42:28.80] 说完,小船就消失在了西边。
[42:32.44] 这似乎是我第一次听见,
[42:34.60] 他像是人类一样,
[42:36.66] 含有感情的声音。